加齢による影響
年をとると、肝臓には多くの構造的な変化や微細な変化が起こります。年齢とともに、明るい茶色から暗い茶色へと色が変わり、次第に小さくなり、血流量も徐々に減少していきます。こうした変化はあっても、肝機能検査の値は通常は正常のまま保たれます。
肝臓がさまざまな物質を代謝する働きは、年をとるにつれて衰えていきます。薬の中には、高齢者の体内では若い人ほどすみやかに代謝されないものがあります。このため高齢者では薬の効果が強くなりすぎる危険があり、薬の使用量が適切かどうか注意深くチェックする必要があります。各種のストレスに対する肝臓の抵抗力も、年とともに弱まります。そのため肝臓に有害な物質は、若い人よりも高齢者に大きなダメージを与えることがあります。傷ついた肝細胞の修復されるスピードも、若い人に比べて遅くなります。
胆汁の生成量や流量は年齢とともに減少します。この変化と関連があるかどうかは不明ですが、年をとると徐々に胆石ができやすくなります。
高齢者の服薬上の注意
高齢者は複数の病気、特に慢性疾患にかかる可能性が高いことから、若い人より薬を多く服用する傾向があります。米国では、高齢者は1人1日あたり平均で4〜5種類の処方薬と2種類の市販薬を服用しているといわれています。加えて、高齢者は若い人の2倍以上も薬の副作用を起こしやすくなっています。副作用を起こすと重症になりやすく、生活の質(QOL)にも支障を来すようになり、医療機関の受診や入院が必要な事態になりがちです。
年齢を重ねるにつれて、体内の水分の量が減少し、代わりに脂肪組織の量が増えてきます。そのため高齢者では、薬を希釈する水分が不足しがちで、水溶性の薬は濃度が濃くなります。そして薬を貯蔵する脂肪組織が比較的多いため、脂溶性の薬は体内に多く蓄積するようになります。また、年齢を重ねるにつれて、腎臓は薬を尿中にうまく排泄できなくなり、肝臓が薬を代謝する能力も衰えます。こうした加齢に伴う変化のため、多くの薬は若い人に比べて高齢者の体内にとどまる時間が長くなり、薬の作用を長びかせ、副作用のリスクを高めます。これらの理由から、高齢者ではある種の薬について、1回の用量を減らすか、1日量を減らす必要があります。また、より安全な他の薬に変更することもよくあります。
高齢者は薬によるさまざまな作用に敏感です。たとえば睡眠補助薬や抗不安薬を使用すると、眠くなりがちで、錯乱を起こしやすくなります。動脈を広げ、心臓の仕事量を減らすことで血圧を下げる薬を使うと、高齢者では若い人に比べて血圧が劇的に下がるようです。
一部の抗うつ薬やジフェンヒドラミン(不眠症の治療に用いられる薬)など、一般的に使用される多くの薬は、抗コリン作用があります。高齢者は特にこの作用を受けやすく、錯乱、眼がかすむ、便秘、口の渇き(口渇)、ふらつき、排尿困難、膀胱の制御喪失などを伴います。抗コリン作用の中には、ふるえや吐き気の軽減といった好ましいものもありますが、多くは望ましいものではありません。
薬は、治療対象疾患以外の病気との相互作用、薬と別の薬との相互作用、薬と食品との相互作用、薬とサプリメントやハーブとの相互作用などによる副作用を引き起こすことがあります。高齢者は病気にかかりやすく、若い人よりもたくさんの薬を服用するので、薬と病気、薬と薬の相互作用を起こす可能性もそれだけ高くなりがちです。患者、医師、薬剤師が力を合わせ、これらの相互作用のリスクを抑える対策を講じることが大切です。
医師の指示に従わないで薬を服用するのは危険です(服薬指示の非遵守)。高齢者だけが指示通りに薬を服用しないわけではありませんが、高齢者の40%は指示を守っていないというデータがあります。薬をまったく服用しない場合はもちろん、服用する量が少なすぎたり多すぎたりした場合にも問題が起こります。副作用が起こったからという理由で、指示よりも量を減らすのは理にかなっていると思うかもしれませんが、やはり薬の服用のしかたを変える場合はあらかじめ医師に相談すべきです。
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