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肺~気道の病気 『アスベスト肺

アスベスト肺

アスベスト肺(石綿肺)は、アスベストの粉塵を吸いこんだために起こる肺組織の広範囲に及ぶ瘢痕化です。

アスベストは異なる化学構造をもつ繊維性の無機ケイ酸塩から構成されています。アスベスト繊維を吸いこむと肺の奥深くまで入りこみ、瘢痕化を起こします。アスベストを吸いこむと、肺を覆う2層の胸膜が肥厚化します(胸膜プラークと呼ばれる状態)が、これは癌には移行しません。


アスベスト繊維を吸いこむと、胸膜腔(肺と胸壁内部を覆う2層の胸膜の間のすき間)に液体がたまります。これを非癌性(良性)アスベスト胸水(訳注:労災認定では「良性石綿胸水」)といいます。

アスベストは、胸膜内に中皮腫と呼ばれる癌を起こし、腹膜内には腹膜中皮腫と呼ばれる癌を起こします。米国では、アスベストは唯一の癌性(悪性)中皮腫の原因です。喫煙が癌性中皮腫を起こすことはありません。中皮腫は、4種類あるアスベストのうち、クロシドライト(青石綿)を吸いこんだ後に生じることが最も一般的です。アモサイト(茶石綿)という種類のアスベストも、中皮腫を起こします(訳注:日本ではクロシドライトとアモサイトは製造中止となっており、使用されているアスベストはほぼすべてクリソタイルとなっている)。クリソタイル(白石綿)は他の種類に比べ、中皮腫を起こしにくいとされていますが、中皮腫を起こすトレモライトが混ざっていることがよくあります。中皮腫は普通、アスベストにさらされて30〜40年たってから、それがどんなに微量でも発症します。

アスベストによって肺癌も起こります。アスベストによる肺癌は、吸いこんだアスベスト繊維の量とある程度の関係はありますが、アスベスト肺の患者の中で肺癌(肺癌を参照)を最も高頻度に発症するのは喫煙者、特に1日1箱以上吸う患者です。

アスベストの危険性については広く警戒されていますが、職場以外でアスベストにさらされても、アスベストに関連する病気を発症するリスクはきわめてわずかです。アスベストは、非常に小さく砕かれないかぎり、肺の内部まで吸いこまれることはありません。アスベストを含む断熱材が使用されている建物の解体作業に携わる人のリスクは高くなります。定期的にアスベストを扱う人は肺疾患を引き起こすリスクが最も高くなります。アスベスト繊維にさらされる機会が増えれば増えるほど、それだけアスベストに関連する病気を発症するリスクが高くなります。

症状

アスベスト肺の症状は、肺が広範囲にわたって瘢痕化した後に徐々に現れます。瘢痕化によって肺は弾力性を失います。初期症状は、軽い息切れと運動能力の低下です。慢性気管支炎のある喫煙者がアスベスト肺を併発すると、せきや喘鳴(ぜんめい)が現れます。次第に呼吸がより苦しくなっていきます。アスベスト肺の患者の約15%で、重度の息切れと呼吸不全が起こります。

非癌性アスベスト胸水のある患者では、液体がたまるので呼吸困難になります。胸膜プラークは胸壁を硬くするので、軽い呼吸困難のみを起こします。持続する胸痛や息切れは、中皮腫で最もよくみられる症状です。

診断

アスベスト肺は肺機能に異常を起こし、聴診器で肺の音を聞くと、パチパチという異常な水泡音が聞こえます。アスベストにさらされた経験があり、胸部X線検査または胸部CT(コンピューター断層撮影)検査で特徴的な変化が認められれば、アスベスト肺と診断されます。アスベストを吸いこんだために起こる胸膜プラークはカルシウムを含むことが多く、胸部X線検査やCT検査で簡単に見つかります。診断のために肺生検を行う必要があるのはまれです。

X線画像上で胸膜の腫瘍(しゅよう)が見つかった場合、それが癌性かどうかを確認するため、胸膜の組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行います。肺の周囲の液体を針で抜き取り、癌細胞があるかどうか分析します。この方法を胸腔穿刺術といいます。しかし、胸腔穿刺術は胸膜の針生検ほど正確な検査ではありません。胸部X線検査で腫瘍の疑いがあった場合は、その部分に初期の肺癌がある可能性が高いため、検査をしっかり行わなければなりません。

予防と治療

アスベストの吸入によって起こる病気は、作業現場のアスベストの粉塵やアスベスト繊維の量をできる限り減らすことで予防します。アスベストを使用する工場の粉塵対策が改善したため、今日ではアスベスト肺になる人は減少しましたが、40年も前に吸いこんだアスベストでまだ中皮腫が発症しています。居宅内のアスベストは、安全な除去技術をもつ作業員に取り除いてもらう必要があります。これまでアスベストを取り扱ってきた喫煙者は、肺癌のリスクを減らすために禁煙し、年に1回は胸部X線検査を受けるべきです。

アスベスト肺の治療はほとんどが症状の緩和です。たとえば、酸素吸入療法は息切れを軽減します。胸腔穿刺術で肺の周囲にたまった液体を取り除けば、呼吸は楽になります。ときに、肺移植でアスベスト肺を根治できることがあります。

中皮腫は常に致死的です。中皮腫の患者のほとんどは、診断から1〜4年以内に死亡します。化学療法や放射線療法には十分な効果がなく、手術で腫瘍部分を取り除いても癌は治りません。他の治療としては、できる限り高い生活の質(QOL)を維持しながら、痛みや息切れを緩和することに重点がおかれます。

















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