糖尿病 『インスリン補充療法』
インスリン補充療法
1型糖尿病の人の大半はインスリン療法が必要です。2型糖尿病でも同様に多くの人がインスリン療法を必要とします。インスリンは通常、注射されます。それはインスリンが胃で破壊されるため、経口では服用できないからです。現在は、鼻腔スプレーや経口で服用できる新しい剤形も試用されています。
インスリンは通常、腕、もも、腹壁の皮下の脂肪層に注射します。使われる小型注射器は非常に針が細く、注射をしてもほとんど痛みを感じません。インスリンを皮下に送りこむエアポンプは、注射針が耐えられない人のために使用されます。インスリンペンはインスリン入りのカートリッジを備えられるので、携帯したり、特に1日数回、自宅以外でインスリン注射が必要な人には便利です。インスリンポンプを使う方法もあります。この装置は、皮膚に刺したままにした小さい針からインスリンを連続的に送りこみます。インスリンの追加量は、プログラムされた時間に、あるいは必要に応じて放出されます。ポンプによる補充法は体内でインスリンが正常につくられる方法に、よりよく似せた方法です。ポンプを使うとさらに良好に血糖コントロールができる人もいますが、ポンプの装着が煩わしいという人や、針を刺した部位がただれる人もいます。
インスリンには3種類の基本型があり、それぞれ作用する発現時間と持続時間が異なります。レギュラーインスリンなどの速効型インスリンは、作用が最も速く現れますが、持続時間は短時間です。リスプロインスリンはレギュラーインスリンの1種で、最も速効で作用します。速効型インスリンは毎日数回注射が必要な場合に使用され、食前15〜20分あるいは食後すぐに注射されます。この作用は投与後2〜4時間で最高の活性を示し、6〜8時間持続します。
中間型インスリン(インスリン亜鉛懸濁液、レンテあるいはイソフェンインスリン懸濁液など)は1〜3時間で効きはじめ、6〜10時間後に最大の効果を発し、18〜26時間持続します。この種類のインスリンは朝に注射して1日の前半分を供給するか、夕方使用して夜間のインスリンを供給します。遅効型インスリン(遅効型インスリン亜鉛懸濁液、ウルトラレンテ、グラルジンなど)は、最初の約6時間はほとんど作用がありませんが、28〜36時間効果を持続します。
インスリン製剤は、数カ月間は室温で安定しているので、持ち運びができ、職場や旅行にも携帯できます。しかし、インスリンは極端な温度で保存してはいけません。
インスリンはいろいろな要素を考え合わせて選択します。どのインスリンが最適か決める際には、以下の要素を考慮します。
最も簡単な処方は、中間型インスリンを1日1回注射することです。しかしこの処方は高すぎる血糖値を最小限コントロールするだけなので、これで最適のコントロールができることはほとんどありません。朝、1回目の注射に速効型と中間型の2つのインスリンを組み合わせて使用すれば、より厳密なコントロールが可能です。血糖値を調節する機会が多くなるので、この組み合わせ方にはより高い技術が必要です。2回目の注射は、1種類か、両方を夕食時か就寝時に行います。最も厳密に血糖値をコントロールするには、速効型と中間型インスリンを朝晩注射し、さらに日中に速効型インスリンを数回、追加で注射します。インスリンは必要量の変化に応じて投与量を調節します。この処方は糖尿病の知識と治療上の細かい注意が必要ですが、インスリン治療を受けているほとんどの人にとって最良の方法と考えられます。
人によっては、特に高齢者では毎日同じ量のインスリンを注射しますが、その他の人では、食事、運動、血糖値のパターンで毎日のインスリン量を調節します。さらに、インスリン必要量は体重の変化、感情的ストレス、あるいは病気、特に感染症によって変化します。
長期間投与を続けると、インスリン抵抗性が現れる人がいます。注射されるインスリンは、体がつくるものと完全に同じではないため、このインスリンに対して抗体ができる場合があります。これらの抗体はインスリン活性を妨げるので、インスリン抵抗性のある人は大量のインスリンが必要になります。
インスリン注射は皮膚や皮下組織に影響を与えます。アレルギー反応はまれですが、痛みやほてりが生じ、それに続いて発赤、かゆみ、注射部位の周囲が数時間腫れたりします。さらに、注射によって脂肪が蓄積してこぶのようにふくらんだり、脂肪を破壊してできる皮膚のくぼみができます。多くの人は注射する部位を、たとえば、ある日はももに、別の日は腹部、次は腕というように順繰りに変えてこうした問題が起きないようにしています。
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