急性腎不全
急性腎不全では、血液をろ過して代謝性老廃物を取り除く腎臓の能力が、数日から数週間のうちに急速に低下します。
急性腎不全は、腎臓への血液供給量が減少するような状態や、尿路のどこかで尿の流れが妨げられるような状態が原因となって起こります。腎臓自体に影響を及ぼす病気が原因で急性腎不全になる場合もあります。多くの場合、急性腎不全の原因は特定できません。
急性腎不全の原因は、
重度のナトリウム喪失と脱水、
外傷による血管の遮断などが原因で生じる血液量の不足
心臓のポンプ機能の低下(心不全)
極度の低血圧状態(ショック)
肝不全(肝腎症候群)
尿の流れの阻害 前立腺肥大
腫瘍による尿路の圧迫、または尿路内の腫瘍
結石
腎臓内の損傷 アレルギー反応(検査で使うX線造影剤に対するアレルギーなど)
有毒物質(薬物、毒物)
腎臓のろ過機能単位であるネフロンへの障害(溶血性尿毒症症候群、
全身性エリテマトーデス、アテローム腎疾患、ヴェーゲナー肉芽腫症、 結節性多発性動脈炎などに伴って起こる急性糸球体腎炎や血管損傷)
腎臓の動脈や静脈の閉塞
腎臓内の閉塞(シュウ酸塩や尿酸などの結晶)
外科手術に伴う腎臓損傷
腹部の外傷などによる腎臓損傷
症状は腎不全の重症度、進行速度、原因によって異なります。
急性腎不全の初期症状として、一部の患者では体液のうっ滞が起こり、足や足首が腫れたり顔や手がむくんだりします。尿がコーラ色になる場合もあり、これはさまざまな腎臓病の徴候になります。
尿量は1日約500ミリリットル以下に減少するか(大多数の健康な成人の尿量は1日に約700〜1900ミリリットル)、完全に止まってしまうことがよくあります。
尿の量が非常に少ない状態を乏尿といい、まったくない状態を無尿といいます。しかし、急性腎不全であっても、中には普通の尿量が続く人もいます。
急性腎不全の状態が続いて代謝性老廃物が体内に蓄積すると、疲労感を感じ、集中力の低下、食欲減退、吐き気、全身のかゆみが起こります。心拍数の増加(頻脈)やめまいが起こることもあります。
原因が閉塞の場合には、腎臓内に尿が停滞するために、腎盂(じんう)と腎杯が拡張します(水腎症)。尿路の閉塞によって、わき腹にけいれん性の痛みが起こり、痛みの程度は軽度から非常に激しいものまでさまざまです。
水腎症の場合、尿に血液が混じる人もいます。閉塞の位置が膀胱(ぼうこう)より下だと、膀胱が膨張します。膀胱が急激に膨張すると激しい痛みを感じます。
膀胱が徐々に膨張した場合には、痛みはほとんどありませんが、著しく膨張した膀胱で下腹部がふくれます。
入院中に急性腎不全になった場合には、直近に生じた外傷、外科手術、薬、あるいは感染症などの内科的疾患が原因であることがよくあります。
急性腎不全ではしばしば、原因となった基礎疾患の症状の方が明らかに目立ちます。たとえば高熱、命にかかわる低血圧(ショック)、心不全や肝不全の症状が、腎不全の症状よりも前に起こり、症状が明らかで急を要することがあります。
急性腎不全の原因となる病気の中には、体の他の部分にも影響を及ぼすものがあります。
たとえば、腎臓の血管を損傷するヴェーゲナー肉芽腫症では肺の血管にも損傷が生じ、せきとともに血を吐き出すことがあります(喀血[かっけつ])。皮膚の発疹は、急性腎不全の原因のうち結節性多発動脈炎、全身性エリテマトーデス、毒性のある一部の薬物などに特有のものです。
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