透 析
透析の種類の選択
どの種類の透析がその人に最適かを判断するにあたっては、ライフスタイルなどさまざまな要素を考慮する必要があります。腹膜透析は自宅で行うことができるため、血液透析センターに通わずにすみます。
腹部にけがをした人や手術直後の人の場合、医師は血液透析を勧めます。腹膜透析は血圧が頻繁に変動し、高血圧または正常血圧の期間と低血圧の期間がみられる人に適しています。血液透析では、透析時に適度な量の体液を取り除くという簡単な方法で血圧をコントロールできます。コントロールできない場合には、血圧を下げる薬が必要になります。
透析に伴う注意点
透析を受けている人は特別食が必要になります。腹膜透析を受けている人の多くは食欲が減退し、またタンパク質が透析中に失われます。そのため、特別食はタンパク質を比較的多く含む内容とし、1日に理想体重1キログラムあたり約1グラムのタンパク質を摂取します。塩分は通常のナトリウム塩とカリウム塩の両方とも制限されます。
血液透析を受けている人の場合、毎日のナトリウムとカリウムの摂取量はさらに制限されます。リンを多く含む食品も制限しなければなりません。血液中のナトリウム濃度が持続して低いか低下傾向にある場合は、毎日の水分摂取量も制限されます。体重を毎日測定して体重増加を管理します。透析を受けてから次回の透析までに体重が過度に増加している場合は、水分の取りすぎと考えられます。
総合ビタミン剤によって、血液透析や腹膜透析で失われた栄養素を補う必要があります。また、エリスロポエチンまたはダルベポエチンで赤血球の産生を促します。炭酸カルシウムや酢酸カルシウムなどのリン吸着剤を使って、食品中の過剰なリン酸塩を取り除きます。
低カルシウム血症と重度の腎性骨ジストロフィの場合は、カルシトリオール(活性型ビタミンD)やカルシウムを補給します。
透析を受けている人は、生活のあらゆる面で喪失感を味わいます。特に、自立して生活できなくなることが苦痛に感じられます。自分のライフスタイルの崩壊にうまく対処するのは困難なことです。透析を受けている多くの人が、気分が落ちこみ不安になります。心理カウンセリングや社会カウンセリングは、透析を受けている本人だけでなく家族にとってもしばしば役立ちます。多くの透析センターが心理面や社会面でのサポートを行っています。自立して生活できなくなることに対処するには、以前と同じ趣味や、関心をもっていたことを続けるように励ますことが役に立ちます。血液透析を受けている人は、透析センターまで定期的に通う移動手段を確保する必要があります。透析を受けることで、仕事や学校、余暇の活動に支障が出ることもあります。
長期透析患者では、60歳以上の人が半数以上を占めています。高齢者の方がしばしば、若年者よりも長期透析の生活にうまく順応できます。ただし透析を受けている高齢者の場合、成長した子供たちに依存せざるをえなくなったり、独りで暮らしていけなくなることがあります。また、若い人に比べて治療の疲れを感じやすくなります。さらに、透析のスケジュールに合わせるために家族内の役割や責任に影響が及び、このことがストレスや罪悪感を生んだり、家族に迷惑をかけていると悩むこともしばしばあります。
発育が阻害された小児の場合は、自分は同年代の友だちと違うという孤独感を抱くことがあります(子供と家族に影響を与える社会的問題:
子供の病気を参照)。アイデンティティー、自立、外観などの問題に直面している若い成人や青年期の男女の場合は、透析によって問題がさらに複雑になります。また、小児期は発育に必要な栄養を十分に摂取しなければならないため、透析を受けている小児にとって食事は大切な問題です。
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