悪性腎硬化症
悪性腎硬化症では、重度の高血圧症(悪性高血圧症)によって腎臓の最も細い動脈が損なわれ、腎不全が急激に進行します。
悪性腎硬化症は高血圧がある人の約1%で起こり、白人より黒人に多くみられます。
男性では40代と50代、女性では30代に最もよくみられます。
悪性高血圧症の原因として最も多いのは、コントロールが不十分な高血圧症です。
糸球体腎炎、慢性腎不全、腎動脈の狭窄(腎血管性高血圧症)、腎臓血管の炎症(血管炎)などからも生じ、まれに褐色細胞腫、原発性アルドステロン症(コーン症候群)、クッシング症候群などの内分泌障害も原因となります。
症状と診断
まず、重度の高血圧が脳や心臓に及ぼす影響によって引き起こされる症状が現れます。
落ち着きを失う(不穏状態)、視力障害、頭痛、吐き気、嘔吐、眠気、錯乱などは、脳組織の腫れ(脳浮腫)が原因の症状です。
浮腫が悪化したり脳内で出血が生じると、てんかん発作や昏睡も起こります。
眼底検査によって、出血部位、体液の滲出、視神経の腫れがわかります。
心臓の肥大や心不全がみられることもあります。
腎臓への損傷により、やがて疲労感や脱力感など腎不全の症状が出てきます。
腎臓から漏れ出ているタンパク質と血球が尿中に検出されます。
赤血球の破壊や産生量の減少により、しばしば貧血が起こります。また、血管内で血栓が多発することもよくあります(播種[はしゅ]性血管内凝固症候群。
腎臓が産生するレニンやアルドステロンといった血圧を調整する物質の血液中の濃度が非常に高くなります。
経過の見通しと治療
悪性腎硬化症を放置すると、約50%は6カ月以内に死亡し、それ以外の人も大半は1年以内に死亡します。
死因の約60%が腎不全、20%が心不全、19%が脳卒中、1%が心臓発作です。
食事療法と薬で血圧を積極的に下げ、腎不全を治療することで、死亡率は大幅に低下します。
腎不全が重度でなければ、治療でかなり改善します。
進行性腎不全の場合は透析で現状を維持できますが、ときには透析を中止できるほどのレベルまで回復することもあります。
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